こんな記事がありました。悪性リンパ腫なので病気(がん)の種類は違うのですが、夢枕獏さんの心境には共感するものがあります。
頭では分かっているつもりでも、実際にがん持ちになって、はじめて実感として分かることは多いです。
たとえば、命には限りがあること。誰でもわかっていることですが、がんになってはじめて、ぼんやりとしていた「自分のおわり」が、とても鮮明になりました。それがいつなのかは分からないけれど、それほど遠くない可能性がある。命の終わりより前に自由に動けなくなる時が来るんだろうな、と思う。だから、先延ばしにしよう、という考えがなくなります。来年ではなく来月に、来週ではなく今週に、明日ではなく今日に、と思うようになりました。そして、あと何回この人に会えるんだろう、あと何回この場所に来れるんだろう、とも思うようになりました。
余命も、どうなるか分からないですが、いろいろなデータを見たりして「あと3年か5年くらいで考えておこうかな。10年先はわからないよな。」と思ったりします。そうすると、3年とか5年で、これはやっておきたいなぁ、ということが出てくる。一方で、これはやらなくていいな、とか、生きているうちにはやりきれないだろうな、と思うことも出てきます。やりきれなさそうなことは、では誰にバトンタッチできるかな、ということを考えたりします。
そして、先が普通の人より短いだろうとはハッキリわかっているのに、リハビリ・回復が進むうれしさも夢枕獏さんの言う通り。前より体力が持つようになった、長い時間起きていられるようになった、とか、同じ距離を歩いても筋肉痛にならなくなったとか、歩くスピードが回復して人に追い越されることが少なくなった、とか。いままで、そんなことは考えたこともなかったのですが、そういう小さな喜びがあったりします。
仕事を少しづつ元に戻すというか、量を増やしているのも、私も同じ。目標をもって、でも無理のない範囲で、と調整しながらやっています。仕事をしていると、がんのことを忘れるというか、意識しない時間が生まれるし、未来のことを思ってワクワクするし、精神面の健康によいと感じます。
治療の効果が出ていればうれしいし、もうちょっと頑張れるかな、とおもう。効果がでないと、不安になって仕事のことが意識の中心にはいなくなる。そんな、不安定さも。林の中の道を歩いている時のように、太陽が当たる場所があるかと思うと、木にさえぎられて暗い場所もある。それが不規則に繰り返す。私はそんな感じで日々を過ごしていますし、おそらく、がんを持つ人の多くがそんな心境なのではないかな、と思います。